「この時代をイエスと共に生きる道」

「この時代をイエスと共に生きる道」
カルメル会 中川 博道

今年の台風は、各地に甚大な被害をもたらしましたが、わたしたちも修道院で驚きの事態に遭遇しました。庭の何本もの大きな木が、根こそぎに、あるいは幹の半ばからねじり倒され、電柱まで折れて倒れるほどの風が吹荒れました。『ラウダート・シ』が指摘しているように、地球が叫びをあげていることを目の当たりにする光景のようでした。
人類のエネルギー活動は、地球の自然のエネルギー活動を上回るほどのものになっているといわれます。その状況は産業革命以来、200年余りの間に世界人口は7倍強に急増し(現在75億人)、かつ全体的に10倍ほど豊かな生活になってきたと言われます。人類は、膨大なエネルギーを放出しながら科学技術の急速な進歩を遂げ、こうした世界を造り上げて来ました。そしてわたしたちがこのままの生活をつづけエネルギーを放出しつづけるなら、人間圏は100年もたないと指摘する専門家たちも現れています。
このような時代に、イエスはわたしたちと共にどう生きようとされているのでしょうか。
今から50年余り前、教会はすでに「今日、人類史の新しい時代が始まっており、深刻で急激な変革が次第に全世界に広まりつつある」(『現代世界憲章』4番)と言っていました。今や、わたしたちは経済的成長とその快適さを求めて歩みつづけるのか、地球上の生態系の安定性を求めて生活のスタイルを変えていくのか、一方を選ばざるをえない時代に差し掛かっています。
 このような背景の中で、教皇様は訴えかけています。
「わたしたちは、後続する世代の人々に、今成長しつつある子どもたちに、どのような世界を残そうとするのでしょうか。それはこの世界でわたしたちは何のために生きるのか、わたしたちはなぜここにいるのか、わたしたちの働きとあらゆる取り組みの目的はいかなるものか、わたしたちは地球から何を望まれているのか、といった問いです。」(ラウダート・シ160)
  「話しているのは、心の在り方です。それは落ち着いた注意深さをもって生活しようとする姿勢、展開を予想したりせずに全身全霊をもって相手と向き合おうとする姿勢、懸命に生きるよう神からいただいた贈り物として一瞬一瞬を受け止める姿勢です。イエスは野の百合と空の鳥をじっと見つめなさいと招かれたとき、あるいは、金持ちの青年をご覧になり彼の満たされなさを見抜かれ『彼を見つめ、いつくし』(マルコ10.21)まれたとき、わたしたちにこうした姿勢を教えてくださったのです。イエスは、すべての人またすべての事に対して存在のすべてをもって向き合う方であり、また、その姿をもって私たちを浅はかで粗暴で衝動的な消費者にする、あの病的な不安に打ち勝つ道を示してくださったのです。」(ラウダート・シ226)
毎日の生活をイエスと共に、天の御父と、隣人と、大地(自然界や社会)とのかかわりを愛において注意深く生きるようにと招かれています。

2018年12月08日