2023/04/09 復 活 の 春(尹師)

復 活 の 春

ユン・サン・ホ(ヨハネ)神父

万物が新しくよみがえる季節、春。あらゆる所で、生命の息吹が、青々とした豊かさと温かさを味あわせてくれます。生命の神秘が、全てを抱擁する大地の生命力を感じさせる季節。生まれたばかりの幼児のように、母のふくよかな温もりが漂う腕に抱かれて、愛と忍苦の生き方を受け入れられた聖母マリアを心の中で描いてみます。

 全ての聖人、聖女の言葉が、わたしたちの心に素直に受け入れられ、共鳴共感できるのは、難しい言葉とか教えではありません。感じたり、見たりすることの出来る、ありのままの平凡な生活の営みの中で現わされる、愛の実践によるものでありましょう。

それゆえ、父親よりは母親の愛情の方が、わたしたちを一段と懐かしくさせるのではないでしょうか。花の香りが遠くまで届くのは、香りの目的が自身を守ろうとするものではなく、ひたすら分け与えようとするものだからと言われています。

まことの愛とは、このように全ての人を抱擁し、独占欲や執着心を持たず、全てを差し出そう、それをわたしたちの心に積み重ね、蓄えて、他の人々に伝えて行きたいと思います。イエス様が、人類の救いの為に、ご自身の身も心も差し出すことが出来たのは、母マリアの貧しい生活と、沈黙の中にしみわたる愛と忍苦の働きがあったことで成就されたのだということを、わたしたちは知ることができます。

今も、すべての人々が、母の愛と忍耐の犠牲による香ばしい香りで培われ、成長させてもらっています。母のその愛を食べ、飲み、香りに包まれて育てられているのです。ですから、その愛で他の人々を愛して生かし、愛の繋がりによってその香りを拡散し、愛の実をあたり一面に実らせるのです。

わたしたちが、冬の暗く厳しい寒さの日々を耐え抜いてこなかったならば、どうしてこの美しい花咲く季節を迎え、その芳しい香りの恵みを受けることができただろうか、と思い巡らすとき、次のようなことに思い至ります。聖母の頭上に輝く冠の栄光は、どのようにしてお受けになったのかと考えてみます。十字架の美しい愛と、苦しみと死の受容があったので、復活の喜びと平和が存在することを、今一度思い起こしたいと思います。

だからこそ、冬の厳しい寒さを克服することが出来た人のみが味わう、春の温和なぬくもり、世の美しさを感じる事が出来るのではないでしょうか。わたしたちの心の母マリアの忍耐と愛を心に秘めて生きていくならば、わたしたちは日常の生活の面であらゆる困難を克服し、復活の喜びを分かち合い、感謝しながら神の国を伝えるでしょう。

2023年04月23日