2023/08/28 「フィリピンのイエズス会国際修練院にて 柳田敏洋神父」

フィリピンのイエズス会国際修練院にて

 イエズス会司祭 柳田 敏洋

イエズス会に入会して丁度40年目、司祭となって32年目、そして年齢も70歳を過ぎましたが、イエズス会から新しい任命をもらい、この6月からフィリピンに転任となりました。そして首都マニラ郊外にあるイエズス会国際修練院(Sacred Heart Novitiate)のスタッフ、日本管区の修練長として、仕事を始めました。

現在、先進国と呼ばれる国では司祭の召命、修道者の召命が減少しており、日本でもイエズス会への入会は毎年1人ないし2人、あるいはゼロという状態が続いています。そこで2018年からフィリピンに国際修練院が開かれました。フィリピンにあるイエズス会修練院は長い歴史を持ち、そこに加わる形で日本からも修練者を送るようになりました。

ご存じのようにフィリピンはカトリック信徒が80%以上いるアジアで唯一のカトリック国で、司祭・修道者の召命も続いています。以前から、中国本土から希望してイエズス会に入会した中国人のグループがいて、その人たちもフィリピンのイエズス会修練院で養成を受けていました。そのため中国人の司祭もスタッフとして働いていました。その経験から、国際修練院が生まれました。

現在、フィリピンと中国以外に、日本、台湾、シンガポール、マレーシア、そしてオーストラリアが加わっています。新入会者を含め、全部で18人がいます。その中の2年生修練者7名が8月2日に修道者として一歩を踏み出す初誓願を立てます。フィリピン人3名、中国人1名、シンガポール人2名、日本人1名です。国際修練院の共通語は英語です。フィリピン人やシンガポール人、そしてオーストラリア人は英語に苦労しませんが、日本人は苦労します。中国人は事前にかなりトレーニングを積んでくるので、結構よく話せます。

けれども国際修練院のよさは、様々な国からそれぞれ文化も言葉も価値観や生活環境、経済状況も異なる中で入会し、共同生活をする中で、お互いに理解し合い、助け合い、仲間としてまとまっていくところです。もちろん簡単ではないのですが、神様を信じ、イエスに倣って福音を生き、伝える人になりたいとの志でつながれ、人々のために働きたいとの思いを共有することで、目の前の困難を乗り越えていきます。これから先、世界はますます違いを越えて国際協力が求められる時代になると思います。本当の意味でイエスの福音を生き、証することで人々の心に愛と平和をもたらす働きが求められます。国際修練院でそのつぼみに触れる気がしています。

私は日本にいた時に、キリスト教の霊性に東洋の霊性を統合させたいと願って、上座部仏教由来のヴィパッサナー瞑想を取り入れたキリスト教的ヴィパッサナー瞑想を手ほどきしてきましたが、フィリピンでもこれを伝えられたらと思っています。

そこで早速、7月17日から21日まで5日間、キリスト教的ヴィパッサナー瞑想のワークショップを行いました。イエズス会の修練者だけでなく、他の男女の修道会の修練者も参加し全部で6か国30名が参加してくれました。フィリピン、中国、日本、シンガポール、東チモール、コンゴからの人たちでした。ほとんどの人がこのような瞑想は初めてでしたが、とても熱心に参加し、瞑想にしっかり取り組んでくれました。この瞑想は座禅のように身体を使って、身体の感覚に気づき、呼吸の感覚に気づくところから入っていきます。皆、床に敷いたお座布団の上に腰を下ろして座るのですが、そのような座り方に慣れていない人が多く、しばらくしないうちに足がしびれたり、痛みを感じたりでした。けれども何回か繰り返すうちに少しずつ静かに瞑想できるようになっていきました。そうするとこれが心の祈りを助けるようになります。キリスト教の祈りは頭と心中心の祈りが多く、特に現代人はインターネットやスマホに慣れ親しんでいて、これなしには生活できない人が多く、これはどの国でも同じです。頭でっかちになりがちだということです。そうなると、祈りも薄っぺらなものとなり、信仰も弱くなります。

それに対してこの瞑想は身体から入るので、実感が伴い、そこから内面に向かうことで実感を伴う祈り、実感を伴う確かな信仰を育むことができるようになります。参加者の皆が評価してくれたのもこの点でした。これからのキリスト教信仰は心と身体の全体を含めた実感を伴う信仰がますます求められると思います。先進国の人々の中にキリスト教信仰が弱くなっている原因にこの点があると私は思っています。

フィリピンのイエズス会国際修練院に来て、スタッフとなり、アジアの若い人々に本当の信仰と霊性を伝えるお手伝いがこれからできればと思っていますが、7月のワークショップはその手ごたえを感じさせてくれるものでした。

時々、日本に帰国する機会もあると思いますが、これからのフィリピンでの新しいミッションのためにお祈りいただけると幸いです。

画像1「キリスト教的ヴィパッサナー」  /  画像2「イエスのみ心像の前でワークショップ参加者との集合写真」

2023年08月28日